「運命共同体 百年の大計」  F-8-3


3. 検討の準備  

3-1 “いい加減”の理由

 「百年の大計」が“いい加減”に決められてしまうのはどうしてでしょうか?

 まず、政府(行政)/与党と野党がケンカ(激しい対立)ばかりしているからとの指摘もあるでしょうが、これだけでは不充分です。対立がないように見えるのに“いい加減”の場合も少なくありません。

 つぎに、政府/与党による守旧志向、野党によるなんでも反対、メディアによる偏向報道、エセ専門家によるデマ、活動家による扇動があるからとの指摘もあるでしょうが、これらだけでは不充分です。実は、これらの背景にもなるのですが、もっと重要な問題点が並存しています。つまり、キーとなる複数の問題点が各当事者において同時に発生しています。

 これらの問題点が上記1. 三つの出来事でのアンダーライン部で示唆されています。事例検討に入る前に、これらを以下で明確化することにします。

3-2 キーとなる問題点

1)信念の反映

 信念を反映させてしまう、つまり客観的であるべき議論に対して自分が拠り所としている主観的な信念を反映させてしまいます。典型例は強制起訴での反原発ですが、信念としてはイデオロギーから強い思い入れ(ゼロリスク・低線量忌避などの過度の安全重視、生態系保護・人工物忌避などの過度の環境重視)まで様々です。

 事実ベースの三案件とこのような信念は基本的には無関係のはずですが、実際には右派と左派の人々で三案件の見解は明確に分かれることが多くなっています。注) 

 

注)これは組織が案件を信念に関連づける上に、個人が自らの信念を体現する組織の見解に盲従する傾向が強いためと思われます。 分かりやすい例では、世界各国での三案件がその国のイデオロギーに対応している傾向は見られない。たとえば、中国では原発を強力に推進し(稼働中37基、建設中21基、計画中24基)、世界最大の三峡ダムも完成させているが、その他の温暖化対策にきわめて消極的である。この方針を日本の左派vs右派の軸で示せば、イデオロギーとして全く相容れない右派よりもさらに右に位置する。

  

2)感情の影響

 感情の影響を受けてしまう、つまり@怒りが燃え上がる、A不安に陥る、B情緒的となる、C無闇に反発する、など感情的な行動をしてしまいます。典型例は@はグレタさんの「あなた方は邪悪そのもの」、Aは「深刻な被曝症状がもうすぐに出る」(下記4-1-1)、Bは「温暖化でホッキョクグマがかわいそう」(4-3-2)、Cは二子玉川の「堤防建設ありきの発想が露骨」でしょう。

 これらは当事者自身が知らずに陥ってしまう場合、ならびに当事者が世論を故意に陥れる場合の両方があります。

                                           

3)功利の優先

 功利を優先させてしまう、つまり「運命共同体のため」との建前とは裏腹に自分(自グループ)の功名・利益を優先させてしまいます。典型例は二子玉川の「素晴らしい眺めが遮られる」ですが、立場別では、与党は既得権益の維持、野党は党勢のアップ、メディア(マスコミ媒体)/ジャーナリストは売り上げ・知名度のアップ、科学者/専門家は研究予算・実績のアップなどを優先させてしまう場合が多々あります。

 また「百年の大計」のとおり超長期の政策であるが故に、自分たち現世代の利益を将来世代よりも優先させてしまう場合もあります。典型例はグレタさんから「あなた方は私たちを裏切っています」と糾弾されている我々、あるいは原発からの放射性廃棄物を次世代に残す「核のごみ問題」でしょう。

 

4)二元論による決めつけ

 善悪、あるいは真偽の二元論で決めつけてしまう、つまり人物なら「善人」か「悪人」か、あるいは見解なら「真実」か「虚偽」かの単純な二者択一で決めつけてしまいます。

 「悪人」の典型例は東電トップですが、一般的には、自分たちに都合のよい専門家は「善人」であって学識豊かで信念を貫く人格者とする一方、都合の悪い専門家・役人は「悪人」であってずる賢い御用学者や卑怯な権力の手先、腹黒・人面獣心・守銭奴、と決めつけます。

 あるいは、自分たちに都合のよい見解は「真実」であってしっかり学ぶ一方、都合の悪い見解は「虚偽」であって検討の価値すらないと全否定します。(検討してみないと全否定など出来ないはずですが・・・)

 

5)不確実性の恣意的解釈

 不確実性を恣意的に解釈してしまう、つまり予見がきわめて難しい不確実な事柄を自説に都合のよいように解釈してしまいます。典型例は@二子玉川の「国の設定水位は過大」、Aグレタさんの「大量絶滅の始まり」で、@は楽観に、Aは悲観に過ぎた解釈をしてしまっています。なお、当事者の多くは本当にそのように思い込んでいますが、意図的に決めつけている人もいます。

 案件別では、「エネルギー政策」では原発の安全性や再生可能エネルギーの実現可能性、「治山治水」では今後の異常気象や各種治水策の有効性、「地球温暖化」では最も基本となる人為説、さらに地球を寒冷化させる太陽活動低下・巨大噴火・核の冬などとなります。注1)

 これらの不確実性に対してはどのように対応すべきなのでしょうか? 登山では、まずは最も安全確実と予想されるコースと時期を選びますが、雨や怪我・ピバークなどの対策品は持参しますし、天候が想定外となれば速やかにコースや日程を変更するでしょう。三案件でも「最も確実な方向に進みながらもアクシデントに備え、想定外の状況となればすぐに軌道修正する。備えの程度は不確実性レベルに応じて決め、細心の状況監視を怠らない」のが正しい「不確実性対応」となるでしょう。注2)

 

注1)人為説とは、地球温暖化の主原因は人間活動で排出されるCO2とする仮説。 世界の数千人の科学者によるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)でも「人為説が正しい確率は95%以上」としており、科学的に確定していない。

注2)マイナスの事柄に関しては「不確実性」と「不確実性対応」はそれぞれ「リスク」(危険の可能性)と「リスクマネジメント」(リスクの管理)と同義になるが、ここでの不確実性はマイナスに限らない。

 

 

 

 


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