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「不毛促進行為」を阻止するには
2. 未必の故意犯
Aの未必の故意犯はマズイことになると分かっていながらイケナイ行為を繰り返しているので、この点では植木等の「分かっちゃいるけど やめられない」のサラリーマンに譬えられそうです。彼の行動を手掛かりにして「不毛促進行為」の阻止策について考えてみます。
1)煩悩を捨てなければならない?
まず、酒も飲まないような品行方正/清廉潔白の人でしか健全な議論は実現できないのでしょうか? 僧侶である植木の父親はこの歌を人間の煩悩がよく表されていると評価したそうですが、「不毛促進行為」を阻止するためには「欲望」「迷い」「憎しみ」「プライド」「争い」などの煩悩を捨てなければならないのでしょうか?
実際にはそうではないと思います。「不毛促進行為」阻止のためには、たとえ強い「欲望」があっても賢い欲望ならなんら問題はないでしょう。「“不毛な信念対立”は双方ともに不利益」が理解できない愚かな欲望だけが問題なのです。また「迷い」「憎しみ」「プライド」は“不毛な信念対立”では主役級を演じますが、健全な議論では影の薄い脇役です。もっとも重要なこととして、「争い」(対立)を捨てることも必要ありません。「健全な議論でこそ双方に利益となる真理に近づくことができる」ので、それはむしろもったいないことです。
そうすると、「不毛促進行為」の阻止は、如何ともしがたい煩悩からの脱出よりは簡単なのかも知れません。たとえ心中にドロドロとした煩悩を抱えたままでも、実務的に対立相手とで健全な議論さえ成立できればよいからです。
2)サラリーマンの展開
かのサラリーマンの展開とそれに対応する“不毛な信念対立”の状況は次のようになるでしょう。
(彼の同僚を “不毛な信念対立”での対立相手に見立てて、⇒以降にその状況を示しています)
@ 同僚から「一杯
行こうか」のジェスチャー。⇒ 対立相手から挑発される。
A その誘いにしっかり乗ってしまう。⇒ その挑発にまさに「不毛促進行為」で返してしまう。
B 盛んに酒の注ぎ合い。⇒ 「不毛促進行為」の応酬/エスカレート。
本人の態度/気持ちは次のようになっていたのでしょう。
@ 酒を誘って欲しそうにしていた。⇒
敵対的な態度をしていた。
A 「これで飲めるぞ!」⇒
「これでやっつけられるぞ!」
B 盛り上がっている。⇒
敵愾心を高ぶらせている。
そうすると各ステップでの阻止策は次のように考えられるでしょう。
@ 酒は飲めないふりをする。⇒
(外面的には)敵対的ではなく、ともに真実を目指す態度を示す。
A 誘われてもきっぱりとお断りする。⇒
挑発されても決して「不毛促進行為」で返さない。
B 飲むにしてもマイペースを守る、⇒
議論を粛々と進める。
これらは極めて常識的なものであり、「不毛促進行為」の阻止は(その気さえあれば)それほど難しいものとは思えません。誰でも(その気さえあれば)出来そうです。
・・・と言うことは「その気」こそが必須かつ重要となるようです。
3)「その気」にさせるには
それでは、どうすれば「その気」になるのか? @〜Bとは違って本人には受動的とはなりますが次のようなことが必要なのでしょう。
C「ベンチでゴロ寝」で危うく凍死するところだった。
⇒ 傷つき精根尽き果てた上に事態はかえって悪化してしまった。
D「ベンチでゴロ寝」で家族に大迷惑をかけてしまった。
⇒ 「関係者」に大きな不利益を与えてしまった。
これらによって自分の愚かさがとことん身に染みれば「その気」にもなるはずです。
しかし、これでも懲りない御仁にはさらに次のような強制力が必要となるでしょう。
E 家族から痛飲癖を諭された。
⇒ 「関係者」から「不毛促進行為」を諭された。
4)「関係者」の重要性
DEでの「関係者」とは、対立行動に直接関わっている人々(対立当事者)ではないが、その対立によって損益の影響を受ける人々としています。世論形成層よりも広く、社会問題の対立であればその人数は膨大となり原発なら全国民が、地球温暖化なら全人類が「関係者」となります。立場も一方の陣営に賛同、中立、あるいは無関心と様々です。そして、“不毛な信念対立”では対立当事者のみならずこれら「関係者」すべてが(たとえ勝利側に賛同していても)不利益を被ることになります。
サラリーマンの場合でも「関係者」がいます。もし彼の粗相を問題視した会社が全従業員に対して帰宅途中の飲酒を制限したとすると、適度な飲酒を楽しみにしていた多数の従業員(「関係者」)に迷惑をかけることになります。これに大いに恐縮した彼は「その気」にもなるでしょう。(D) さらに、会社のどこを歩いていても常に白い目で見られ、彼らからその先々で直接諭されれば嫌でも「その気」になるでしょう。(E)
注意すべきこととして、Eでは「関係者」が自ら行動を起こす必要があり、ここでは「関係者」が主役になります。
以上が未必の故意犯に対する「不毛促進行為」の阻止策になると思います。
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