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論考 「不毛促進行為」を阻止するには
1. 「不毛促進行為」
1)“不毛な信念対立”の回避
本サイトの趣旨は「双方ともに不利益となる“不毛な信念対立”は回避して健全な議論の促進に努めましょう」となっていますが、恐らく、この趣旨に真向から異議を唱える人はほとんどいないと思います。もちろん、この実現性には首を傾ける人が多いでしょうし、「そんな綺麗事を言って全くオメデタイ」と呆れる人も少なくないでしょうが、「綺麗」と言うからにはこの趣旨ではなくその実現性を否定しているだけと思います。
つまり、多くの人々は「実現性は別として、“不毛な信念対立”が回避できるに越したことはない」と考えているはずであり、実際、対立相手に対して「もっとしっかりと事実を抑えて欲しい。もっと真面目で真摯な議論をして欲しい」と強く感じたことも多々あると思います。恐らく、心の底では“不毛な信念対立”回避を願わない人はほとんどいないと思います。
2)「不毛促進行為」の結末
しかしながら、その一方で、少なからずの人々がその真逆となる「不毛促進行為」を自ら繰り返し、結果的に双方ともに不利益となっています。
「不毛促進行為」とは、
・誇張/矮小、チェリーピッキング、歪曲、虚偽などの偏った事実の提示、
・我田引水、情緒的、論理性欠如などの歪んだ理屈の展開、
・扇動的、大衆迎合的、根拠薄弱などのセンセーショナルな主張、
・対立相手に対する誹謗中傷・個人攻撃、
(裏返しとして、仲間、特に自説支持の専門家の資質・人間性に対する過度な称賛)
などとなります。
そして、これらの応酬が、真摯で精緻で建設的であるべき健全な議論を阻害してしまっています。
さらに、社会問題の場合には、世論に付和雷同/反発の安易な反応を、あるいは嫌気がさしての無関心を引き起こして、冷静で適切で総体的であるべき健全な世論形成を阻害してしまっています。
このようにして、結局は双方が不利益を被ることになります。
たとえば、原子力発電、豊洲市場、子宮頸がんワクチンの問題では、そのリスク判断はとても難しく完全に確定(証明)し得ないために特に質の高い議論と世論形成が重要となっています。しかし、残念なことに、これらが「不毛促進行為」の応酬により押しつぶされてしまっています。
すなわち、原子力発電では双方の「不毛促進行為」によって、世論に本当のリスクを理解してもらえずに結局は多数の原子炉建設を許してしまいましたし、具体的な安全対策に関する専門家同士による真摯な議論もできなくなって福島原発の大事故を招いてしまいました。
豊洲市場でも、地下のベンゼンがどのようにして消費者の口に入るかの説明もできずに「食の安全はゆずれない!」と叫び続けていたので、結局は本当の懸念をいくつも抱えた移転を許してしまいました。しかも、対立感情によって事前検討が十分に行えなかったため、使い勝手の悪い施設が出来てしまいました。
子宮頸がんワクチンではセンセーショナルな映像で世論形成に成功して接種率を低減させましたが、次第にその医学的根拠の薄弱さが明らかとなってきて、今度は揺り戻しによってまともな議論なしに一気に接種の全面再開となる可能性が高くなっています。
いずれも対立にかけるエネルギーの大方を「不毛促進行為」に費やしてしまっています。もしも最初から健全な議論に全エネルギーを費やしていればこのような不利益は発生しなかったのにと、少なからずの人々が心の底では思っているのではないでしょうか?
3)「不毛促進行為」のパターン
なぜ「不毛促進行為」を繰り返してしまうのか? まず、パターンとしては主に次の三つになると思われます。
A “不毛な信念対立”を気にしながらついつい「不毛促進行為」を繰り返す。
B “不毛な信念対立”を無視してわざと「不毛促進行為」を繰り返す。
C なにも知らず気づかず意図せずに「不毛促進行為」を繰り返す。
失礼ながら、Aはいわば「未必の故意犯」、Bは「戦略的な確信犯」、Cは「無知な過失犯」と言えそうです。
それぞれのパターンになりやすいのはつぎのような人々だと思われます。
A:未必の故意犯
・確固たる信念を持っているが、一応は真実に対して誠実であろうとしている。
・「不毛促進行為」による失敗体験を持っている。
たとえば、「不毛促進行為」によって議論のレベルが下がった、世論が離れて行った、など。
・意識の高い市民。
B:戦略的な確信犯
・確固たる信念を持っており、それが真実に対する誠実さを上回っている。
・「不毛促進行為」による成功体験を持っている。
たとえば、もともと勝ち目はなかったが「不毛促進行為」によって議論が混乱したため完敗せずに済んだ、世論が味方してくれた、など。
・市民活動家、「専門家」(カッコ付き専門家。いわくつきの/他分野の/自称の)。
C:無知な過失犯
・確固たる信念を持っているが、真実に対する誠実さには思いが及ばない。
・「不毛促進行為」を意識したことがない。
・ナイーブな市民。
以下、パターンごとに「不毛促進行為」を阻止する方法について検討し、最後にその実現可能性について考えました。
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