科学者/専門家の責任と倫理 
  F-6-3



4.  科学者/専門家としてのあるべき姿勢  2017.12.31

この『悲喜劇』を回避して「よりよい社会」を本当に実現するにはどうすればよいでしょうか? 移転反対の科学者/専門家は「科学者同士で議論を」と訴えたり知事に申し入れ書を出したりしていますが、いずれも無視されています。(上図のA・B) やはりその元となる原因(@)こそ改善しなければなりません。

そのためには、移転反対の科学者/専門家にご自分の姿勢を改めていただく必要があります。つまり、「科学者/専門家としての主張は公正な科学的/技術的根拠のみに基づくべき」との姿勢を徹底していただけかなければなりません。これは科学者/専門家の倫理と言えるものですが、同時に実利的な『悲喜劇』回避策にもなると思います。

 

具体的には次のようになります。

上記1. での「食の安全が脅かされる」のような意識的な主張(プロバガンダ)に対しては、上記の『悲喜劇』のメカニズムをしっかり理解していただきます。

もしプロバガンダとして成功すれば社会正義が実現するのだから良いのではないか、と考える人がいるようであれば「科学者/専門家は真実を伝えるという社会的責任を負っており、その倫理に背くことは反社会的行為に等しい」ことを思い出していただきます。

  

2 .での「豊洲で働く人々が健康被害を受ける」のように認知バイアスに影響されている主張に対しては、まずは、「自分ひとりの思い込みは間違いのもとであり、異論を持つ人々との真摯な議論でこそ真実に近づき得る」という科学者/専門家の常識(学術会議や技術検討会議が不可欠な理由)を思い出していただきます。

 

つぎに、下記「思考実験」において自分の科学的/技術的な主張が全く揺るがないことを検証していただきます。

仮定1:自分が東京都の市場長である。

仮定2:自分の土地に貸店舗を建てたが、豊洲と同様な土壌汚染が判明し入居者から苦情が来た。

仮定3:無償貸与した土地に建てられた共同作業所で豊洲と同様な土壌汚染が判明したが、このまま使わせてほしいと強く要望された。

 科学的/技術的根拠のみに基づいているのであれば主張は不動のはずです。この「思考実験」で自分の主張に不安を感じた人は科学者/専門家としての発言は控えていただきます。

 

 なお、逆に、自分は上記改善策を完全にクリアーしていると確信できる科学者/専門家であれば、社会的義務として科学的/技術的な主張を積極的に発信すべきことになります。


                 前ページ        次ページ