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不毛な信念対立
V 「不毛な信念対立」の改善
「不毛な信念対立」での「不毛」を改善する、あるいはより悪化させないための方策を提案します。
まずは必要不可欠な改善の動機を示し、つぎに具体的な改善策を「不毛な信念対立」全体、および重要な不毛要素毎で提案します。
実施のハードルは高いのですが、理論的に導かれる改善策とはなります。
もともと改善しようとする気持ちは無いのが普通ですし、特に信念は本質的に変化を嫌うため改善の動機づけが必要不可欠になっています。
下記を理解することが動機づけとなります。
@ 「不毛な信念対立」では虚構の信念になりやすいこと。
「不毛な信念対立」では誤った事実判断に基づいた信念になりやすく、このような信念は真実からかけ離れた虚構でしかありません。
A “違和感”は「不毛」の気づきである場合が多いこと。
自分たちの言行に“違和感”を覚えてしまう場合は、自分たちが「不毛」を引き起こしているのではないかとうすうす気づいていることが多いはずです。
B “公共の敵”と批判されかねないこと。
現在、不正・フェイクは“公共の敵”であると世論で認識されていますが、「不毛」も同様と見られるようになり自分が批判させることにもなるはずです。自分としては社会のため、正義のために行っていることが公共の敵”とされかねません。
そして、以上3点とも自分にとってかけがいのないアイデンティティの喪失につながりかねませんので、しっかり改善をしておいた方がよいことになります。
(これは「『アイデンティティ喪失が恐ろしい』ので『正しいと信じ込もう』」と同じ安全志向だが進め方は真逆)
なお、対立している当人自らがこれらに気づいて真摯にならなければ意味はありませんが、このためには周辺(少し離れた関係者など)からの働きかけがきわめて重要となります。この際には、当人の価値観・アイデンティティ、および主張の趣旨は尊重した上で、「不毛」の問題点と改善の必要性だけを指摘します。
1)不毛な信念対立
「不毛な信念対立」全体の改善策は以下となります。
第一に「損得」「感情」「思い込み」を優先して改善します。(上記、T 1. 3))
信念対立とは言いながら「信念」以外の要素、特に「不毛」の“血肉”である安易な/誤った「思い込み」が強く影響している案件は多くなっています。
第二に、自分が関与していない類似案件を学び、その知見を参考にして改善します。
自分が関与していない案件ではどのようにして「不毛」となるか客観的に理解することができるので、その知見に基づいて自分の案件を検討すると自分の「不毛」への関わりとその改善策が見えてくるはずです。
(これはマインドコントロール脱出プロセスにヒントを得た改善策)
第三に、様々な対立を改善するための制度・研究・手法はすでに数多く存在しているので、状況に応じてこれらを利用します。
まず、利害関係の絡む対立では「裁判・調停」「メディエーション」、紛争関係では「紛争解決心理学」「平和学」、コミュニケーション関係では「対立教育」「ファシリテーション」、論理思考では「クリティカルシンキング」などがあります。これらは「信念」以外が主となっていますが周辺を抑えるために有用です。
つぎに、「信念」に直接関わるものでは「確信メカニズム」「認知的不協和」「潜在意識」などの心理学、「認識論」などの哲学の研究が有用と思われます。
まず、「情報」「思考」に共通する改善策です。
正/誤のある情報と適/不適のある思考は批判されやすいのですが、これを利用して「対立相手からの“適切な批判”を真摯に検討する」が最も有効な改善策となります。
対立相手は自分の知らない情報をいくらでも(嫌と言うほど)提供してくれますし、自分の思考の弱点を手厳しく指摘してくれます。大教室での講師ではなく厳しい家庭教師のようなものです。
この改善策は「思い込み」と共通しているのですが、単純な思い込みとは異なって「情報」「思考」の場合には“適切な批判”の抽出が特に重要となっています。「信念」が絡んでいるので対立相手の批判はかなり歪み、感情も激しくなっているはずなので、抵抗感・敵意を排除した理知的な態度によって彼らの批判を正確・冷静に検討することが必須となります。
また、最も基本的とも言えるのですが、“適切な批判”を行ってくれる対立相手との対話がきわめて重要となっています。
つぎに、「情報」だけの改善策としては「情報リテラシー」の充実が有用です。注) 世の中では明らかなフェィク・デマのみならず、程度の差はあれ偏向した情報が流布されているので、ここから正しい情報を見きわめる能力がきわめて重要となっています。
3) 「価値観」「アイデンティティ」
まず、「価値観」「アイデンティティ」に共通する改善策です。
両者ともに損得勘定を拒否するので”損得ベース”策は適用できませんし、適/不適・正/誤がないので前節の「対立相手からの批判」も利用できません。
一方で、改善のために価値観・アイデンティティの中身を変更する必要は一切なく、情報や思考などへの
“過度な干渉”をしないことだけで十分となっています。このことはきわめて重要です。
まず、「価値観」と「アイデンティティ」が“過度な干渉”をしてしまう主な理由は以下3点となります。
@ より確かで堅牢なものにしようとする気持ちが強い。
A 己の正義を実現しようとする気持ちも強い。
B これらのためには事実や論理を踏みにじることに抵抗を感じない。
そこで、“過度な干渉”を抑止する策(改善策)は以下3点となります。(上記理由の番号と対応)
@ 人それぞれで構わないこと、自分で確信しているだけで十分であること、他人に承認してもらう必要は
A (価値観・アイデンティティ自体なら構わないが正義の実現ともなると)その正義は正しくなければ
(これには「クリティカルシンキング」や「確信メカニズム」の研究が有用になる)
B 事実軽視や非論理的な言行はすぐに批判の標的にされて晒されますし、これには反論も出来ないので
・「価値観」:本来の機能(信念チェック)を果たしているか?
・「アイデンティティ」:アイデンティティの危険性を理解しているか?
下記の理解が改善の動機づけとなる
・「不毛な信念対立」では虚構の信念になりやすいこと。
“違和感”は「不毛」の気づきである場合が多いこと。
・“公共の敵”と批判されかねないこと。
・いずれもアイデンティティの喪失につながりかねないこと。
下記が改善策となる
・「不毛な信念対立」:「思い込み」「感情」「損得」を優先して改善。類似案件を学ぶ。対立改善のための現存する制度・研究・手法を利用する
・「情報」「思考」:対立相手からの批判を真摯に検討。批判の抽出と対話が重要
・「価値観」「アイデンティティ」:中身を変える必要なし。“過度な干渉”さえしなければよい
・“過度な干渉”になる理由は、@確かで堅牢なものにしたい、A正義を実現したい、B事実や論理を踏みにじる、である。
・それぞれの改善策は、@自分の確信だけで十分、他人の承認は不要なことに気づく、A本当に正しい? その確信はどこから? と自問する B対立で大変不利になることに気づく、となる。
・いずれも周辺からの働きかけがきわめて重要
W 全体のまとめ
T 類似案件への展開
前編の「第1編 川辺川ダムでの『不毛な対立』」についてまとめました。
川辺川ダムと類似した案件で共通性を確認した結果、前編の考察がかなりの案件に展開できそうでした。
U 「不毛な信念対立」の考察
これらの案件は厄介な「信念」が強いので「不毛な信念対立」としました。
「信念」の3本柱の価値観・情報・思考、およびアイデンティティを加えた不毛要素を利用して「不毛な信念対立」の形成・要因・様相について詳しく考察しました。
類似案件の案件全体、および川辺ダムでの主張・姿勢への不毛要素の影響度合いを調べて、これらの類型化・特徴づけ・掘り下げを行いました。
V 「不毛な信念対立」の改善
改善に必須となる動機づけとしては「不毛な信念対立」がアイデンティティの喪失につながりかねないことを理解する必要があります。
改善策としては「不毛な信念対立」全体には「思い込み」「感情」「損得」を優先して改善する、類似案件を学ぶ、現存の制度・研究・手法を利用にすること等になります。
「情報」「思考」には対立相手からの批判を真摯に検討することが有効で、これには批判抽出と対話が重要です。
「価値観」「アイデンティティ」には中身を変える必要なし、“過度な干渉”さえしなければよいことが重要で、この“過度な干渉”になる理由とその改善策は以下となります。
・確かで堅牢なものにしたい ⇒自分の確信だけで十分、他人の承認は不要なことに気づく
・正義を実現したい ⇒本当に正しい? その確信はどこから? と自問
・事実や論理を踏みにじる ⇒対立で大変不利になることに気づく。
(完)
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