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研究 U編 信念対立の検討
U-2章 構造の検討 2-2
1. 標準形 (「事実対立」「非事実対立」)
信念対立の基本構造を図1に示す。(オリジナルはU-1章 図4)
図1
「事実対立」「非事実対立」では3要素の重みに違いがある(U-1章 図4)。これを文字の大きさでイメージするとそれぞれ図2、図3となる。
図2 図3
「複合型」の多くは重みに大差はないので図1となる。
これらの実例がT-4章の表2〜4で示されており、全体的には本来の形となっている.。
ただし、逸脱している例もあり、それは対立構造が歪んでいるからと言えるだろう。
2. 構造の歪み
もともと、要素は心の中で漠然としたもので自己主張もしないが、明確に表出・主張される信念は自分の正当性・アイデンティティに関わるので排他的・敵対的にはなりやすい。イメージは図4となる。
すでに「不毛」に陥っている例としては右翼vs左翼、死刑制度、中絶(米国)などが当てはまる。
図4
要素同士の対立では、重みのある(概して充実している)方が他方を圧倒することになる。議論がかみ合わずに混沌とした信念対立になりやすい。イメージは図5となる。
原発の撤廃 vs 存続、被曝リスク、従軍慰安婦、進化論 vs 創造論などが当てはまる。
図5
第三は、いわば「信念アンバランス型」で、一方の陣営では3要素が充実し、信念は深みのある柔軟なものとなっているが、他方では3要素が貧弱にも関わらず信念だけが強力に、排他的・敵対的になっている。
要素の対立では充実している陣営は他方を圧倒するが、信念の対立では深みと柔軟さが弱みになって逆に圧倒されてしまうことがある。イメージは図6となる。
似非科学・代替医療、地球温暖化、子宮頸がんワクチンなどが当てはまる。
図6
実際には、強弱はあるもののこれら3ケースが同時に発生していることが多い。
3. ”主観事実”のサブ要素
3-1 「事実対立」
「事実対立」では様々な事実を根拠とするが、それらはすでに広く認知・了解されている客観的事実だけではない。(もしそうであればもともと信念対立は発生しにくい)
実際には、「客観的事実を目指しているものの現状ではそれを証明できないので、各陣営が自分たちとしては真実であると見なしている事実」、いわば主観的な事実(以下、”主観事実”とする)が少なくない。そして、これらの”主観事実”のそれぞれが対立している場合が多い。
また、ある”主観事実”はさらに他の”主観事実”をその根拠にしている。たとえばCO2の寄与メカニズムは炭素循環、吸収飽和、水蒸気の影響などの”主観事実”が根拠となっている。そして、これらも対立している。
そこで、”主観事実”をサブ要素とした「事実対立」の構造を図7に示す。
なお、客観的事実は原理的に対立しないので対立構造には含まれない。
図7
3-2 「複合型」
「複合型」では『価値』の重みは小さくないが、その『価値』の前提となっているのが”主観事実”であり、これが対立している場合が多い。
しかし、原発存続派は、火力発電燃料の購入費による経済力低下やCO2排出による地球温暖化が最も命を脅かすとの”主観事実”を前提としている。
すなわち、両陣営の『価値』自体に対立はないが、その前提となる”主観事実”に大きな差異があって信念が対立している。
これらの構造を図8に示す。
図8
なお、「非事実対立」では主な根拠に事実を含まないので、”主観事実”のサブ要素付き構造は成立しない。
3-3 信念=『価値』(主観事実) ← y=f(x)
客観的事実と違って”主観事実”は将来変更される可能性があるが、もしそうなれば、当人の『価値』は変わらなくても、それにリンクして信念は変わることになる。
たとえば、将来、原発なしでは深刻な地球温暖化を回避できないことが明らかとなったとすると、現在の原発撤廃派の”主観事実”は「原発は不可欠」に変更され、「なによりも命を優先すべし」との『価値』は変わらなくても「原発撤廃」との信念は「原発推進」に変更されるはずである。
実際、今回の事故によって、以前の原発推進を支持する国民の”主観事実”は「原発はとても危険」に変更されて、「多少のリスクよりも産業発展を優先」との『価値』は変わらなくても「原発存続」との信念は一気に減退してしまった。
すなわち、y=f(x)→ 信念=『価値』(主観事実)の関係で、関数である『価値』は変わらなくても、変数である “主観事実”が変われば答えである信念は変わることになる。
(信念の変更に関しては、U-5章にて別のサブ要素を利用して詳しく検討する)
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