研究 T編 予備的な検討 
  T-1章
 本研究について  1-1
                                                                  

1. 目的
1-1 背景
 職場の議論において、いつも決まった人と対立してしまって困っている人も少なくないだろう。
 政治問題では案件に関わらず対立の構図は固定化しており、議論はいつも空回りしている。身近な社会問題では肝心な対話よりも対立相手への誹謗中傷が目立つことが多い。誰もが等しく影響を受ける客観的/科学的事実に関する案件ですら、このような状況が見られる。

 建設的な議論も何の成果もなく徒労感しか残らないこれらの対立はまさに“不毛”である。
 しかしながら、その当事者は自覚有無に関わらず自分なりの“信念”を持っている場合がほとんどである。実の所、これらはその”信念”同士の対立であって、しかもその“信念”が故に“不毛”となっていることが多い。
 このような”不毛な信念対立”は双方の当事者のみならず、案件に関わるすべての人々にとって損失になっているのは確かである。皆の損失となる”不毛な信念対立”は、その改善が強く望まれるところである。


1-2 従来の研究・解決手法
 人間(集団)同士の対立に関してはすでに多くの研究や解決手法が存在している。たとえば、利害の対立には「裁判・調停」や「メディエーション」、力の対立には「平和学」や「紛争解決心理学」、相手との対立には「対立教育」、さらにコミュニケーション改善には「ファシリテーション」、論理的思考には「クリティカルシンキング」などが以前より実績を上げている。また、”信念対立”に関しては、頑な確信の超克をめざす「構造構成学(主義)」の有効性が確認されつつある。
 しかしながら、これらは”不毛な信念対立”を主たる守備範囲としていないので、その改善に有効とは必ずしも言えない。


1-3 本件研究の目的
 以上のことから、”不毛な信念対立”に特化した新たな研究が必要と考えられるので、本研究の目的を「”不毛な信念対立”に対する理解を深めること、およびその改善案を案出すること」とする。
 ただし、新たな研究であることと筆者の実力からは、本目的を達成し得る今後の研究のための足掛かりとなることが現実的な目標となる。


2. 進め方

2-1 方針
 下記を本研究の姿勢とする。
  ● 分野を問わず多数の”不毛な信念対立”事例を、”信念”と”不毛”の観点から詳細に検討する。
  ● 『要素』とそれによる構造化を利用する。
  ● 案件自体については中立の立場を守る。 (”信念”と”不毛”の観点では一方だけへの批判もある)

 『要素』と構造化では主に次のことを期待している。
(T-4章 1.で詳説)
   ・隠れた本質的な姿を示すことが出来る。
   ・立体的/多層的で動的な実態が理解できる。
   ・多数事例を横断的に理解できる。
   ・普遍的な構造/問題点/改善例の把握、および各案件の位置付けが行える。
   ・これらの知見により個別案件の解析と改善策の案出が有効的に行える。

 下記流れに沿って研究を進める。
  1) 『要素』を設定し、それによる構造化を行う。
  2) 『要素』と「構造」の検討を行う。
  3) 『要素』の重み評価を行う。
  4) 個別案件を解析する。
  5) 改善策を案出する。

 ただし、実際には理解しやすいようにステップを踏むことにして、まずはU編にて(不毛となる以前の)「信念対立」一般を対象とした1)〜3)を行う。その後、“不毛な信念対立”を対象とした1)〜3)をV編にて、4)5)をW編以降にて行うこととする。
 現在、U編以降は未完成であり、今後のアップとなる。

2-2 構成


 

3. 本研究の概要
 次章から続く本研究の内容をごく簡単に示しておく。
3-1  信念対立とは? 不毛な信念対立とは?

 人間(集団)同士の対立には損得勘定が露骨な「利害の対立」、相手の人格・資質に対して反発する「相手との対立」、力に訴える「力の対立」などもあるが、本研究では信念を持つ両当事者が反対の立場で互いに譲らない「信念対立」に注目する。
 「信念対立」それ自体は決して悪いことではなく、一個人の信念をより発展させるには建設的な議論が有効となっている。このような「健全な信念対立」は、残念ながら現実には稀であり、逆に「議論がかみ合わない」「情報や枠組みが異なっている」「聞く耳を持たない」「揚げ足取り」「感情的」などの“不毛な信念対立”が巷にあふれている。
 図1、図2のようにまとめられるだろう。

 図1

   図2

  ちなみに、従来の研究・解決手法を当てはめてみると概ね図3のようになるだろう。


    図3

3-2 事実に関する対立とその他の対立
 白黒のはっきりする「事実」は「信念対立」にとって重要な意味を持つので、案件が事実に関する「事実対立」なのか、そうではない「非事実対立」なのかを区別することは重要となる。図4のようにまとめられる。

  図4
 
 
3-3 信念対立の要素と構造   
 信念は『情報』『思考』『価値観』の3要素によって形成され、さらにそれらは当人固有のもの「個性」と当人の関心から生じた「関心」の影響を受けるとする。図5の要素・構造となる。

図5

 この構造で原発に関する信念対立を整理すると表1となる。
 表1

3-4 ”不毛な信念対立”の要素と構造 
 ”不毛な信念対立”の要素を表2のように設定する。 
表2

 “不毛な信念対立”では、図6のように「不毛化の促進」と「不毛要素の増強」による双方向だけでなく、「バイアス」「信念の劣化」ルートも含む複雑な悪循環が形成されている。
図6

3-5 重み評価  
 案件によって要素の重みは大きく異なり、信念3要素のマップは図7となる。
図7


 不毛6要素のマップは分類毎の3セットの図8となる。 
図8



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